坂上

ツケ飲み

開局時、月給も安く、いつもピーピーしていた。誰もが希望に燃えていて仕事は楽しかったのだが、お金はなかった。でもやっぱり飲みたい(笑)。

今では有り得ないかもしれないが、当時は古町のバーやクラブは会社の名刺を出してツケで飲むことができた。お店のママさんたちも気前が良くて、「良いよ!」と受け入れてくれていた。居酒屋で飲む2、3千円の金はあるのだが、2軒目まではない。それが普通だった。どれだけ助けられたことか。

そんなツケ飲みができた時代ではあったが、「盆と暮れには必ず支払いを済ませなければダメだ」ときつく教えられていた。お店だって楽じゃない。でもツケで飲ませてくれた。その恩義を絶対に忘れるな!ということだった。

なので、少ないながらもボーナスが出ると、当時営業でコンビを組んでいた先輩とお互いになけなしのお金を握りしめて「ツケ飲み借金返済ツアー」に出かけていた。借金がある古町のお店を順番に支払いだけして回るのだ。お店で借金を支払い終えると、「一杯飲んでいきなよ」と必ずママさんに誘われるのだが、ここで飲んでしまうとまた借金ができてしまう。「いや、飲みたいけどツレがいるので今日は支払いだけで勘弁ね」といって後ろ髪を引かれながら店を出る。相方が外で待っているのはそのためだった。互いにその繰り返しだ。

お互いのお店を数軒ずつ回るとタイムアップになる。1日では終わらないのだ(笑)。「じゃあ最後に赤提灯で一杯やって帰るか。続きは明日な」といって、きっちり現金支払いの居酒屋で締めて帰途に就くのだった。